第119回

夢見る力に

 紳士淑女の皆様こんにちは、テクマ!です。本日は『テクマ!の社会勉強 Vol.1 ハイラインレコーズ店員編』へご来場頂き、誠に有難うございます。このパンフレットの中では今回ハイラインレコーズで展示された2点の衣装について解説させていただきましたが、このおセンチ日記では、テクマ!の衣装への考えなどを話させて頂けたら、と思います。
 まず、テクマ!は「隣のお兄さん」的なアーティストが好きではありません。圧倒的な存在としてのアーティストと、それに夢中になり、そのアーティストを好きである自分を高めていく努力をするオーディエンス、という関係が好きです。ですから、アーティストとしてステージに普段着で立つ、ということは絶対に考えられません。アーティストとして表現する世界を、更に拡大させるための衣装が必要であると考えています。
 こういう考えを持つきっかけになったのは、テクマ!の源泉としていつも名前が出て来るソフトバレエの森岡賢さんです。真っ赤なジャンプスーツや全身スパンコールの衣装、シックな黒かと思ったら全高1mのウイッグがついていたりと、意図は分からないながらもとにかくその姿だけで「何かすごいことをこの人は表現しようとしている」という思いを若きテクマ!に与えてくれました。その衣装を着ている時に歌われていた歌詞や、そのツアーのパンフレットにあったテキストを分析して、衣装に込められた意図を必死に考えたりもしました。そして、ある程度の解答は出しています。本人と会えるようになった今、本人に気持ち悪がられない程度に、いつかこのテクマ!としての解答について話せればな、とも思っています。
 その後も、衣装についての様々なアーティストの意見を知り、衣装への考えを高めていきました。自分で衣装を作る技術は無いので、衣装を手がけてくれる人とちゃんと話をするために、服に関係するアーティストの本やインタビューを見つけたら、必ず読むようにもしています。デザインについても同じような努力を常にしていますね。特に好きな言葉としては、David BowieのZiggy Stardust Tourのステージ構成を手がけ、また、若いころのボウイがそのパントマイム団体にも所属していたというリンゼイ・ケンプの言葉で、「まず奇抜な衣装で人の目を引きつけなければいけない」というものや、衣装を手がけていた早川タケジついてのジュリーの発言で「ぼく自身、もちろん音楽は好きですが、人を喜ばせたり、驚かしたり、笑わしたりというのが、けっこう好きなんですね。」といったものです。どちらも大事なことだけど薄っぺらい発言ともとられかねない言葉なので、ズルいですが、権威のある人の発言、としてストックしておくことがとても大事だったりします。また、こういった言葉を常にストックしておくことは、他分野の人とのコミュニケーションを円滑にして、結果いい仕事をしてもらうために、とても大事ですね。
 とはいえ、最初からうまく出来ていたわけではなくて、初期は無意味に女装していたり、シルエットやシェイプといったものを何も理解していないまま、吊るしのスーツを着ていたりもしました。転機となったのは、渋谷屋根裏の店長だった故・吉岡哲也さんです。彼はヒステリック・グラマーのカリスマ店員だった過去を持っている人で、彼がテクマ!を気に入ってくれて、家に呼んで見せてくれたジュリーの全シングルのジャケットや、イエローモンキーでも初期の曲のグラムロック的背景、そして1曲程度なら知っていたSparksやGary Glitterのレコードを見せてくれ、テクマ!にいろいろとアドバイスをしてくれたのです。当時の気持ちを素直な言葉にすると、「ヒステリックの店員だった人にアドバイスしてもらえている!」というもので、ちょっと恥ずかしくもあるのですが、ここからテクマ!の自身の表現への自信が1ランク上がり、より堂々と表現できるようになったことは事実なのです。
 新作の『Electric Suicide』で着用していて、今日の一日店員としても着ていた衣装は、テクマ!のここ最近のデザインをすべて手がけている小林ハジメ氏がくれたゴルチェのジャケットです。いただいたのは数年前なのですが、その当時はこれをうまく活かすアイデアがテクマ!にはありませんでした。ですが、このアルバムを仕上げていく過程で、このジャケットが頭に浮かび、合わせるパンツも、結局ゴルチェにこのジャケットを持って行って、「これに合うの下さい」と注文したものです。こういうこともあるので、やはり何か気になるものはストックしておく、という姿勢はとても大事だな、と思います。
 衣装について徒然に書いてみました。こういった意思で揃えた衣装を着て、何を表現しようとしているのか、ということに皆さんが興味を持ってくれたら幸いです。今度は、ライブ会場でお会いしましょう。でわまた、今度は、モア・ベターよ。人身ばいばーい!



▲ページの上へ