2008/04/07

黒い十人の女

ずっと気にはなっていたのですが、なかなか観る機会がなかった、市川崑監督の1961年の作品、『黒い十人の女』をやっと観れました。こーれは面白かった!「誰にでも優しい人っていうのは誰にも優しくないのよ。」っていうセリフとかたまんないですね。

お話としてはですね、テレビ局でプロデューサーをやっている軽い男、仕事は確かにこなせるのですが、すべてにおいて軽薄で、妻以外に九人の愛人がいる男、が出てきます。そして、その妻と九人の女たちが、それぞれの思惑でそれぞれに会い、「ホントにね、あの男って何を考えてるんだか分らないわ。あんな男のこと考えるだけこっちが損するのよね。いっそ誰か殺してくれないかしら。」という気持ちを共感しあって、次第に結託し、全員でその男を殺そうという計画を立てます。

とはいえね、みんながみんなそんなことを言って強がってはいるけれども、自分だけの男になればいいと思っているように思えます。男が軽薄で絶対に自分を幸せにしてくれるはずはないことが分かっているのに、他の女に手を出すのがイヤ、という嫉妬がホントのところの気持ちなんじゃないなかなー、なんて邪推してしまいました。

閑話休題。

そして決行しようとするのですが、なんとか自分だけのものにしようと、それぞれの女がその計画を漏らして、なんともよくわからない出来レースのような状態で、決行の瞬間が訪れるのですが、、、という流れです。

結末のひとつ前の場面から始まり、しばらくしてからお話の発端のほうに戻り、そして結末のひとつ前の場面まで時間通りに進み、結末が来て終わる、という映画の作りになっているので、すごく引き込まれるし、男の軽さといい、女優、レストランの女将、受付嬢、印刷屋の女社長、などといった十人の女のそれぞれの女の業が滲み出た演技や演出といい、画面配置やライティングのモダンさといい、見所がありすぎて困りましたわ。

「複雑になりすぎた現代社会を生きていくために頑張っているつもりなのに、何もかもを情報として処理する能力だけに長けてしまい、人と人との交流ができなくなってしまったのよ。」といった感じのクライマックスのセリフも良かったなぁ。1961年にこれを言っておいたんだから、市川崑って凄いと思いましたわ。

若い頃の玉緒さんはやっぱりかわいかったけど、やっぱ一番グッと来たのは山本富士子さんですね。美しすぎるし、調べてみればみるほど、知性や時代を生き抜く力もある魅力的な女性のようで。あ、でも岸恵子さんのが好きかなぁ。完璧な小悪魔♪あ、ちなみに下の画像の左端が玉緒さん、真中が岸さん、右端がお富士さんです。

juuonna.jpg

で、つくづく思ったのは、名画と呼ばれている作品ってつくづくモダンだな、ということ。そして、モダンなものというのは、伝統に則った上で、新しいものに挑戦することでしか産まれないんだよな、もっと精進せんとな、と思いました。なんていうか、技術者、としてのプライドみたいなものをガツンと見せた上で、魂を感じさせる、ような美学があったように思い、それがまたモダンなのだな、とも思いました。

▲ページの上へ